戦略の危機がP&Lの危機になるまで

その会社の利益率は、業界の中で異彩を放っていた。

全国に数百店舗を展開する専門小売チェーン。扱うのは、消費者の生活習慣や社会的慣行に深く根づいた商品カテゴリだった。日常的に買うものではない。しかし、必要になれば必ず買いに来る。しかもその「必要」は、個人の趣味嗜好ではなく、社会的な規範やライフステージによって生まれるものだった。

この構造が、驚くほどの収益安定性を生んでいた。

社会が回る限り、需要は消えない。そう信じられるだけの根拠が、この商品カテゴリにはあった。しかもリピート性がある。体型や好みが変われば買い替える。生活の変化に合わせて買い足す。顧客は自分から来てくれる。広告宣伝費をかけて集客しなくても、需要の方から店舗に歩いてくる。

粗利率は高く、オペレーションはシンプルだった。専門知識を持ったスタッフが対面で接客し、顧客の要望に合わせて商品を選び、必要な調整を加えて渡す。在庫はカテゴリが絞られているため管理しやすい。店舗あたりの人件費は小売業の中では低い部類に入った。出店すれば利益が出る。利益が出れば出店する。そのサイクルを何十年も回し続けてきた。

この会社は、その成功モデルにほぼ100%依存していた--

目次

  • 1. 成功モデルに絶対の自信
  • 2. 静かに進む需要構造の変化
  • 3. 過剰店舗が利益を侵食
  • 4. データがなく、打つ手が遅れる
  • 5. 決算に現れた厳しい現実
  • 6. 未来は、選択で変わる
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