2020.11.30
コスト削減による収益性向上 ~生産・物流編 ①~

あらゆる業界で様々な方が常に取り組んできた課題、コスト削減。弊社でもアパレル業界で長年、生産・物流のあらゆる場面でコスト削減に取り組んできた。
生産、物流におけるコスト削減と一括りに言っても、今どのステージにいるのか、どこを目指すのかによって、打てる手段、打つべき手段が大きく変わってくる。ここでは生産・物流のステージを段階別に分けて、ステージ毎に打つべきコスト削減策を述べたいと思う。

生産・物流におけるコスト削減のステージは大きく分けて6つあると思われる。

① 型当たりの生産数量がミニマムに満たないがアップチャージで対応可能なレベルで素材は在庫のあるものでの対応。
② 生産ミニマムロットをクリアーできるが素材はミニマムに届かないがアップチャージで対応可能レベル。
③ 自社のオーダーで生産ミニマム、素材ミニマム共にクリアーできるレベル。
④ 一型当たりのミニマムはクリアーしているが単独での物流の経済ロットを満たしていない。
⑤ 単独で素材、生産ロットをクリアーでき、独自で貨物の経済ロットを満たしている。
⑥ 生産背景(生産国)が複数であり、それぞれの国で⑤の条件を満たしている。

先ずは、ステージ①と②についてのコスト削減について述べたいと思う。
ステージ①は生産(CMT)レベルでのコスト削減になる。単独では生産や素材調達にアップチャージが発生するレベルであり、打てる手段や成果も限定的である。その為、いかにアップチャージを少なくするか、無くすかに注力するべきである。
このステージでは単独での生産が不可能なため、先ずは工場選定が重要になる。ポイントは品質やプライスラインが同レベルの製品を生産している背景を選ぶべきである。他社製品であっても、素材、スタイルが類似していれば同一グループの様に扱える可能性があり、それほど生産効率が落ちないという事でアップチャージを押さえられる可能性がある。もしも生産のハンドリングを商社やメーカーに委託しているのであれば、委託先が工場のある程度の生産シェアを握っており、工場に対して影響力を持っている委託先を選ぶ事が重要になる。

また、ステージ②ではステージ①に加えて素材でのコスト削減が可能になる。素材のアップチャージがなくなれば成果は大きくなるが、その為には無駄をなくす事が重要であり、且つ素材選びに多少の制限が加わる。
無くすべき無駄とは、例えば、生地の経済ロットをクリアーできないにも関わらず多くの生地サンプルの中から選定しているケースを何度も見てきた。他に類のない個性的な生地を選ぶのであればまだしも、定番生地と遜色ない類似生地を個性的に選んでいるケースも珍しくない。今のステージで何が必要かを、全社的に共通認識を持つ必要がある。
その上で、限られた選択肢の中で生地選びを行うべきである。それは、アップチャージの無い経済ロットで生産された生地やメーカーリスクで在庫されているランニング生地を極力使用することである。また、他社が大ロット(経済ロット)で生産している生地への共有可能なタイミングでの相乗りができれば大きな成果になる。これらも生産委託先が如何に類似グループの商品を扱っているかがポイントになってくるため、パートナー選びは非常に重要になってくる。

以上の様に、①②のステージでは単独でのコスト削減はほぼ難しく、商社など委託先のバックグラウンドを有効利用することで、一つ上のステージと同等のコスト削減の可能性が見えてくる。
現時点がどのステージであれ、全てのステージでのコスト削減策を理解した上で段階的に目標を定めて実行していくことが重要である。

グローバルコマースイノベーション シニアエキスパート 平野稔人