2020.12.15
人事評価制度と同一労働同一賃金

最近弊社では、人事評価制度変革のお仕事が非常に多い。これは背景に少子高齢化による労働力不足や、グローバル競争の激化やゲームのルールが一変するような競争環境の変化によって、イノベーションを起こす人財価値の高まりなどにより、多様な人材が求められ、人事評価制度の変化が求められているのは当然であろう。

一方で未だに多くの日本企業は、伝統的な年功給をベースにした賃金制度と、普段の働きぶりを評価する曖昧な行動評価をベースに人事評価制度を構築している。

結果として、これは企業の競争力を削ぎ、必要なイノベーションを生み出さないこととなっており、日本経済にとっても大きな損失となっている。

最近でこそジョブ型人事制度が注目されたりしてきたが、特にグローバルスタンダードで見た場合、日本の企業のほとんどの人事制度や人事評価制度は、世界に比べて周回遅れどころか2周も3周も遅れているように思われる。

ただここに来て大きな変化が押し寄せている。これは筆者の視点からすると静かな革命といってもよい。それは何か?同一労働同一賃金である。

では何故同一労働同一賃金がこれまでほとんど変わらなかった日本型の人事制度に対して静かな革命を起こすのかについて解説したいと思う。

同一労働同一賃金は端的に言えば、同じ仕事をしていれば同じ賃金を契約形態に関わらず払うということと、仮に労働の内容に差があったとしても、その差に応じて合理的な範囲での待遇差でないといけないという法律である。

世間ではこれは非正社員に関する法規のように思われているが、詳しく分析すると違うことが分かってくる。

最近同一労働同一賃金に関する画期的な判決が多く出ているが、裁判所(しいては国は)は会社の小手先の主張を認めず、曖昧な役割の差による待遇格差を禁じる判決を多く出しており、様々な事例では会社の年間利益を数倍に上る潜在労働債務を抱えていることが多い。

ここでのポイントは大きく分けて二つある。

1点目は、同一労働同一賃金に対応しようとするとそれぞれの仕事内容を明確にし、それにあった給与制度を用意し、そしてその中で客観的で公平な評価を行い、それをベースに賃金格差を設けないといけないということである。賢明な方ならお分かりになると思うが、これはほとんどジョブ型の人事制度や成果をベースにした人事評価制度の導入と同義語である。

もう一点は、同一労働同一賃金による潜在債務は、人事制度自体が抜本的に改善され違法状態が解消されるまで続くため、抜本的な解決が必要というポイントである。

ここまで来るとお分かりかと思うが、結局国は同一労働同一賃金の導入を進めることで、遅々として変わっていなかった日本の企業の組織の在り方や人事制度に対して変革を迫っているのである。

結局これまで日本は新卒採用を中心に、年功賃金や、普段の仕事ぶりを評価するいわゆるメンバーシップ型の雇用を中心としてきた。これで心地よいのはその制度の中で恩恵を受けてきた日本人の中年男性だけである。

それに対してそもそも労働力不足で女性、高齢者、そして外国人の労働力が必要とされる中で、これまでの人事制度は全くそれらの方々に対して対応していないし、またイノベーションを起こせる優秀な人財も、従来型の何となく組織に属して働き、多くの場合自分の成果以下の報酬しかもらえない人事評価制度や人事制度全般を全く望んでいない。

よって、これからジョブ型の人事制度や成果に基づいた人事評価制度に変革が迫られるのは自明の理である。

さて、人事評価制度の変革だけではなく、グローバルコマースイノベーションでは、この時代すべての企業がイノベーションを起こし強靭なビジネスモデルをいかに作るかについて解説した戦略概念イノベーティブデジタルオーガニゼーション(IDO)を提唱しているので、それも参考にしていただきたい。

イノベーティブデジタルオーガニゼーション(IDO)のレポートリンク

With & After Corona時代の進化戦略レポート

解説YOUTUBE動画のリンク
https://www.youtube.com/channel/UCfCU9wb3FpJDH0ntE0sY-fA?view_as=subscriber

12月15日 グローバルコマースイノベーション マネージングディレクター 平山真也